折元立身は、2001年のヴェネチア・ビエンナーレにて企画展に日本人で唯一選出されるな ど、 40年以上のあいだ国際舞台の前線で活躍してきたパフォーマンス・アーティスト。顔じゅうをフランスパンで埋め尽くした「パン人間」、認知症を患った母を作品に登場させた「アート・ママ」シリーズ等で注目され、地元川崎で開催された大規模個展がきっかけで、国内での評価がようやく高まるのが、作家が70歳を迎えた頃。本書は、個展を企画したキュレーターが長年の取材で綴る、不世出のアーティストの知られざる物語である。
その場にいる人々とコミュニケーションをとりながら展開される、折元のパフォーマンス・アート。その土地や居合わせた観衆によってパフォーマンスの質が変化していく「パン人間」の様子や、「アート・ママ」シリーズの未発表作品も含む全貌も丁寧に解説しています。
書籍デザインは吉岡秀典(セプテンバーカウボーイ)が担当。丸くくり抜かれたカバーや、見返しの風合いある紙、大胆に配置されたノンブルと見出しが目を引きます。強烈なインパクトがありながらも心温まる折元立身の世界観と、響き合うデザインも本書の魅力です。
[目次]
プロローグ 「クレー、万歳!」
第一章 パン人間の旅
第二章 アート・ママの奇想
第三章 ポスト・ヴェネチア
第四章 痕跡としてのアート
第五章 疾風怒濤の2016年
エピローグ コミュニケーション・アートの追求
折元立身略歴
キュレーター/クリティック。九州大学文学部哲学科卒業・同修士課程修了(西洋哲学史)。川崎市市民ミュージアム(以下kcm)在職中、学芸員として写真、デザイン、現代美術に関する展覧会企画を行う。2017年からインディペンデントで活動。代表的展覧会に、「バウハウス 芸術教育の革命と実験」(1994 kcm)、「現代写真の動向」(1995、2001 kcm)、「遠・近 ベッヒャーの地平」(1996 kcm)、「バウハウスの写真」(1997 kcm)、「写真ゲーム」(2008 kcm)、「WA 現代日本のデザインと調和の精神」 (2008 国際交流基金 共同キュレーション)、「生きるアート 折元立身」(2016 kcm)など がある。また、同館で「処刑」、「50人のおばあさん」など多くの折元立身のパフォーマンスの実施に関わる。2019年のバウハウス創設100周年を祝うbauhaus100 japan プロジェクトを推進。巡回展「きたれ、バウハウス」の監修を行う。著書『光のプロジェクトー写真、モダニズムを超えてー』(青弓社 2007)、訳書『写真の哲学のために』(ヴィレム・フルッサー著勁草書房 1999)、編著『Akira Yoshimura Worksー吉村朗 写真集ー』(大隅書店 2014)、共著『現代写真アート原論《コンテンポラリーアートとしての写真》の進化形へ』(フィルムアート社 2019)など。国際美術評論家連盟日本支部(AICA Japan)会員。 https://www.mfukagawa.com/
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