世界的に活躍する作家・イケムラレイコ、塩田千春の二人展「手の中に抱く宇宙」(ケンジタキギャラリー、名古屋)が2021年春に開催された。展示には、それぞれの作品のほか、お互い初めての挑戦となるコラボレーション・ドローイングも出品した。
二人は、ロックダウン状態が続く中、拠点とするドイツのベルリンで、お互いの家やアトリエを定期的に行き来し、対話を重ねている。本書には、その5回に渡る対話をまとめた「対話集」と二人展「手の中に抱く宇宙」出品作を所収。
対話では、コロナ禍での制作で思うこと、女性アーティストとして生きること、ベルリンの壁崩壊後のアートシーン、作品を言葉にすること、家族、日独の芸術教育、美術を教える側と教えられる側の考え、これからのアートマーケット等、作家たちがお互いの作品を見ながら意見交換をしたり、雑談をしながら、とてもリラックスした雰囲気で率直に語り合っている。
作品が出来上がっていく中での葛藤や悩み、コラボレーションが始まって仕上がっていく様子のリアルなやり取りなども含まれ、アーティストを目指す人だけでなく、様々な人たちにとって非常に興味深い内容となっている。
イケムラレイコ
美術家。三重県津市生まれ。1970~72年大阪外国語大学(現、大阪大学)スペイン語科に在籍後、1972年にスペインに渡り、1973~78年にセビリア美術大学で学ぶ。1980年からスイスで本格的に美術家としての活動を開始し、1986年からはドイツを拠点に活躍。作品は絵画、彫刻、ドローイングと多岐に渡り、国境や文化を越えてジェンダーや自然、生命の根源、そして宇宙へのつながりを描き出している。30年以上にわたって世界各地の美術館で数多くの個展を行い、2019年には過去最大の個展となる「土と星 Our Planet」を国立新美術館(東京)にて開催、その成果から令和元年度(第70回)芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。同年「新しい海へ」と題してバーゼル美術館(スイス) へも巡回された。2021年はイギリスで初の個展となる「うさぎ・イン・ワンダーランド」をセインズベリー・センターにて開催。現在はベルリン、ケルンを拠点にしている。1991~2015年ベルリン芸術大学(UdK)教授。2014年~現在、女子美術大学大学院美術研究科客員教授。
塩田千春
1972年、大阪生まれ。ベルリン在住。京都清華大学洋画科専攻。在学中にキャンベラのオーストラリア国立大学美術学部へ交換留学。卒業後ドイツへ渡り、ハンブルク造形美術大学、ブラウンシュヴァイク美術大学、ベルリン芸術大学で学ぶ。生と死という人間の根源的な問題に向き合い「不在の中の存在」をテーマに作品を制作。大規模なインスタレーションのほか、立体、写真、映像など多様な手法で作品を発表している。2015年、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本代表作家に選出。2019年、25年の活動の集大成となる自身最大の個展「魂がふるえる」を森美術館で開催。その後アジア・太平洋地域を巡回している。2020年より多摩美術大学EWS特任教授。
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