※本書は2020年4月に絶版となりました。同時に、改訂新版を発売しております。詳細はこちらをご覧下さい。
現代美術家、AKI INOMATA初の作品集。美術館では初となる個展「AKI INOMATA: Significant Otherness(シグニフィカント・アザネス)生きものと私が出会うとき」(十和田市現代美術館)を記念しての刊行となる。
代表作の《やどかりに「やど」をわたしてみる》から、新作の《ギャロップする南部馬》まで、13のプロジェクトを本人の解説と美しいビジュアルで紹介する。
【寄稿】
パオラ・アントネッリ(MoMAキュレーター)/温又柔(小説家)/岩崎秀雄(研究者/アーティスト)/港千尋(写真家/人類学者) /小池一子(十和田市現代美術館)/金澤韻(十和田市現代美術館)
【展覧会情報】
「AKI INOMATA: Significant Otherness 生きものと私が出会うとき」
会期:2019年9月14日〜2020年1月13日
会場:十和田市現代美術館
【港千尋氏の寄稿文における翻訳論文の盗用について】
このたび、弊社刊行の書籍『AKI INOMATA: Significant Otherness 生きものと私が出会うとき』に収録された、港千尋氏の寄稿文「スピーシーズのアトリエ」において、翻訳論文の盗用がありました。
12月16日、使用翻訳論文の翻訳者である高橋さきの氏より指摘を受け、本件内容について港千尋氏へ確認のうえ、今回の発表に至りました。
高橋さきの氏をはじめとする関係各位、また本書をご購入いただいた皆様に、謹んでお詫び申し上げます。
● 盗用の内容
港千尋氏の寄稿文「スピーシーズのアトリエ」、149ページ、右段11〜17 行目に以下の記述がございました。
「われわれは森羅万象と共振し、ともに詩作活動を行うようなかたちで、類縁関係をつくらねばならないし、われわれが誰にあるにせよ、何であるにせよ、地上に縛りつけられた存在とともに、何かをつくり、生成変化を行い、組成作業を行わねばならないということだ。」(Staying with the Trouble P.102)
上記は、日本語未翻訳書籍であるダナ・ハラウェイ『Staying with the Trouble』(Duke University Press、2016)、102ページからの引用だと示すもので、港氏自身による日本語翻訳であるかのように読める記述になっています。しかし実際は、高橋さきの氏が翻訳した、ダナ・ハラウェイの論文「人新世、資本新世、植民新世、クトゥルー新世――類縁関係をつくる」(『現代思想』vol.45-22、2017 年12 月号 pp.99-109[p.103]所収。原題“Anthropocene, Capitalocene, Plantationocene, Chthulucene: Making Kin”)から、以下の文を改変して使用したものでした。
我々は、森羅万象と共振し(sym-chthonically)〔訳注:sym-chthonicallyの造語成分であるchthonically/chthonicalについてであるが、Cthonicというと、ギリシャ神話の地下の神々が想起されるかもしれない。しかし、ハラウェイは、ギリシャ以前までさかのぼったうえで、そうした存在をさらに拡張するかたちでこの語彙を使用している。『Staying with the Trouble』一七三頁参照〕、ともに詩作活動を行うようなかたちで(sym-poetically)類縁関係をつくらねばならないし、我々が誰であるにせよ、何であるにせよ、地上に縛りつけられた存在[the earth-bound](英語話者モードのブルーノ・ラトゥールによるこの用語に感謝する)とともに、何かをつくり、生成変化を行い、組成作業を行わねばならないということだ(13)。
論文“Anthropocene, Capitalocene, Plantationocene, Chthulucene: Making Kin”は、雑誌『Environmental Humanities』vol.6(Duke University Press、2015)で発表されたものです。その後、一部改変のうえ、書籍『Staying with the Trouble』所収となっています。
また、当該箇所の原文は以下のとおりです。
We need to make kin symchthonically, sympoetically. Who and whatever we are, we need to make-with—become-with, compose-with—the earth-bound (thanks for that term, Bruno Latour–in-Anglophone-mode).13
港氏の寄稿文における当該箇所は、高橋氏による翻訳文から「我々」を「われわれ」と記載したり、「(英語話者モードのブルーノ・ラトゥールによるこの用語に感謝する)」という一文、および高橋氏による訳注を省略するといった変更を加えたうえで、それ以外は同一の内容を使用しています。
高橋氏による翻訳文を、出典として明記せずに、寄稿文において改変使用したことから、本行為は盗用にあたると判断しました。
弊社としての今後の対応につきましては、現在、関係各所と調整を進めております。対応詳細が決まり次第、改めてお知らせいたします。
また、今後このような事案が起こらないよう、出版社としての責務を果たすべく、弊社内での著作権教育の徹底等、再発防止に努めてまいります。
2020年1月23日
株式会社美術出版社
代表取締役社長 遠山孝之
*1月7日に掲載した「お詫びと訂正」から更新しています。
AKI INOMATA(あき・いのまた)
1983年生まれ。2008年東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。INOMATAは、「つくる」行為が人間だけに特権的なものではないことに着目し、生物との共同作業のプロセスを作品化してきた。生物との関わりから生まれるもの、あるいはその関係性を提示している。 近年の展覧会に、「第22回ミラノ・トリエンナーレ」(トリエンナーレデザイン美術館、2019) 、「タイビエンナーレ 2018」(クラビ市内、タイ、2018)、「AKIINOMATA, Why Not Hand Over a“ Shelter” to HermitCrabs?」(ナント美術館、フランス、2018)、「Coming of Age」(Sector 2337、シカゴ、2017)、「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」(2016)、「ECO EXPANDED CITY」(WRO Art Center、ヴロツワフ、ポーランド、2016)ほか国内外の展覧会に多数参加。2017年ACCの招聘でニューヨークに滞在。
アートで社会の課題解決したい、展示を企画したい、ワインに関わるイベントをしたい、
書籍を出版したい、メディアに広告を出稿したい……。
アートとワインを軸とした事業のご相談を、課題の発掘から承ります。
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