磯江毅が一貫して追い求めた独自の写実絵画、その精緻な表現のすべてを、彼が残した多くの作品(ほぼ全作品に近い)を通してヴィジュアルで紹介。
1954年大阪生まれの磯江毅は、19歳で単身スペインに渡り、マドリードのプラド美術館の作品群、中でもドイツのアルブレヒト・デューラーやフランドル派のヴァン・デル・ウェイデンらの作品に魅了され、模写をし、また人体デッサンを学び、同時代のスペインのリアリズム絵画作家と共感し、以来、約30年間マドリードを拠点に制作活動を続けた。リアリズム絵画の伝統が色濃く残り、いまなお写実表現の新たな展開を見せるスペインで、「Gustavo ISOE」という名で活躍した。その精緻な質感表現と静寂に包まれた画面は、超絶技巧という言葉だけでは語りつくせない、絵画の本質的な問いかけを観るものに突きつける。
リアリティーとは何か──つねにそれを追い求めた彼の生涯は、画家としての円熟期にさしかかり、その最高を迎えたときに人生を全うした。53歳という早すぎる死は磯江にとって悲しいことであり、彼の絵を見るものにとっては大きな喪失だといえよう。
磯江毅が一貫して追い求めた独自の写実絵画、その精緻な表現のすべてを、彼が残した多くの作品(ほぼ全作品に近い)を通してヴィジュアルで紹介。
ほかに、磯江自身による写実絵画論とともに、生前交流のあった木下亮(昭和女子大教授、美術史家)をはじめ、マドリード・リアリズムの画家アントニオ・ロペス・ガルシア、マヌエル・フランケロらが磯江の世界について執筆。
磯江毅(いそえ・つよし)
1954年大阪生まれ。大阪市立工芸高等学校卒業後、74年スペインに渡り、アカデミア・ペーニャ、王立美術学校に学ぶ。以後マドリードに定住。78年以降、展覧会にて多くの賞を受賞。現代リアリズムの旗手としてヨーロッパ各地で高く評価される。83年以降、マドリードのヘレル画廊、レヴィ画廊、サラゴサのハロン画廊、東京の彩鳳堂画廊などで個展開催。91年「スペイン美術はいま―マドリード・リアリズムの輝き」展(高島屋<東京/大阪>、主催:朝日新聞社)でマドリード・リアリズムの画家として紹介され注目を集めた。98年以降東京藝術大学美術学部非常勤講師。2002年「写実・レアリスム絵画の現在」展に参加(奈良県立美術館)。第13回タカシマヤ文化基金タカシマヤ美術賞受賞。05年広島市立大学芸術学部教授に就任。07年9月23日逝去。
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