卓越した描画技術をもつ画家・諏訪敦。
その代表作から新作を網羅した作品集。
精緻な再現的描写で知られる現代画家、諏訪敦(1967年、北海道生まれ)。膨大な量のリサーチに基づき、対象の内面に肉薄するような写実絵画を描くことで知られています。本書は、府中市美術館で開催された個展(2022年12月17日〜23年2月26日)に合わせ、これまでの主な作品から、最新作までを網羅した作品集です。
代表作「棄民」シリーズをはじめ、川口隆夫をモデルに描いた《Mimesis》や、コロナ禍のなかで制作された静物画、そして《Sphinx》など、約70点に及ぶ豊富な作品ビジュアルを掲載。
作家本人のエッセイのほか、府中市美術館の鎌田享による詳細な解説、写真家の鈴木理策、山本聡美(早稲田大学教授)、小池寿子(國學院大学教授)らによる書き下ろしテキストも収録。豊かなテキストと豊富な作品ビジュアルにより、諏訪作品の真髄に迫ります。和英表記。
個展「眼窩裏の火事」に合わせて刊行された最新作品集
代表作「棄民」シリーズをはじめ、2022年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したダンサーの川口隆夫をモデルに描いた《Mimesis》や、コロナ禍のなかで制作された静物画など、府中市美術館で開催された個展「眼窩裏の火事」に展示された作品を中心に掲載。そのほか、新作《Sphinx》など展示作品以外の作品も含む、約70点に及ぶ豊富な作品ビジュアルを掲載。
作家本人のエッセイ、展覧会企画者・鎌田享(府中市美術館)による総論と詳細な作品解説により、これまでの諏訪の作品を詳しく分析。さらに写真家の鈴木理策、山本聡美(早稲田大学教授)、小池寿子(國學院大学教授)らによる書き下ろし論考により、対象を「視ること・描くこと」という行為の意味を問い、誠実に挑もうとする画家の真髄に迫る1冊です。デザインは鈴木聖。
終戦直後の満州で病死した祖母をテーマとした《HARBIN 1945 WINTER》など画家の祖先の姿を描いた作品群を紹介。満州と日本の歴史とともに同地での諏訪家の歩みを追った年表や、制作過程を追った資料なども掲載し、対象に迫る画家の姿勢が伝わってきます。山本聡美による論考では、九相図や六道絵を通して戦火を描いた美術の歴史を振り返りながら、諏訪の作品がもつ凄みについて分析しています。
コロナ禍のさなか、諏訪は猿山修と森岡督行の3人で「藝術探検隊」というユニットを結成、写実絵画の歴史について議論を交わしながら静物画の制作に取り組みます。本章では国立西洋美術館の渡辺晋輔との対話、写真家の鈴木理策によるエッセイを収録。諏訪の緻密な描写に込められた日本美術史における西洋画への眼差しや、絵画を描くための「みる」という行為をめぐる画家の思考に迫ります。
本章では、亡くなった人物の肖像画や、川口隆夫をモデルに描いた《Mimesis》などが登場。取材時に描かれたスケッチや数々の習作からは、画家の人物の特徴だけでなく内面にまで迫ろうとする過程がうかがえます。小池寿子による論考では、《Mimesis》に焦点をあて、「舞踏」にまつわる美術・宗教の歴史を紐解きながら、諏訪の絵を通して死後に人に出会うという「奇蹟」について考察します。
【目次】
所感『眼窩裏の火事』について
諏訪敦
みること・みえること・あらわすこと──諏訪敦 論
鎌田享
第1章 棄民
《HARBIN 1945 WINTER》──戦争の美術と文学
山本聡美
第2章 静物画について
静物画を巡る対話
渡辺晋輔+諏訪敦
写真的な眼差し
鈴木理策
第3章 わたしたちはふたたびであう
視ることの奇蹟
小池寿子
作家略歴、作品リスト
画家。1967年、北海道生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース修了。1994年に文化庁芸術家派遣在外研修員としてスペインに滞在。1995年にスペインの第5回バルセロ財団主催 国際絵画コンクール にて大賞受賞。2018年より武蔵野美術大学造形学部油絵学科教授。2020年、紺綬褒章受章。主な展覧会に「諏訪敦絵画作品展 どうせなにもみえない 」(諏訪市美術館、2011年)、「諏訪敦 HARBIN 1945 WINTER」(成山画廊、2016年)、「諏訪敦 眼窩裏の火事」(府中市美術館、2022年)ほか。
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